HAWKINS 6INCH MOC TOE & CHUKKA CR

かつての英国の老舗の靴屋さん、今はABCマートの1ブランドに成り下がってしまったホーキンス。元々かなりリーズナブルな商品展開をされているのですが、さらにとち狂ったような価格で商品を投げ売りしていました。
見かけレッドウィングのアイリッシュセッターそっくりのモックトゥシューズと、見かけクラークスのデザートブーツそっくりのチャッカブーツを色違いで2足。
デッドストックなのか、3足あわせて1万円ちょい?(もちろん、税込、送料込)ともう訳がわからない。
で、思わず買ってしまった。
さてさて、履き心地はいかがなものでしょうか……

本日のアルコール〈サッポロ GOLD STAR〉

これまでデザインが2回ほど変わっているらしいです。
2年ほど前に初めて飲んだ時の印象は、可もなく不可もなく新ジャンルのビールそのものといった味でしたが、このあいだ飲んでビックリ!
黒ラベルの麦芽とヱビスのホップを一部使っているという惹句はでまかせじゃない!
発売当初と比較して、間違いなく旨くなっています。 
これはリピートありやね!
当分これでエエよ!

一番右が現在のデザイン

Lenovo IdeaPad Slim 550(R5 14.0型) 購入

◆プロセッサー AMD Ryzen™ 5 5500U (2.10GHz up to 4.00GHz)
◆初期導入OS Windows 11 Home 64bit
◆ディスプレイ 14.0″ FHD液晶(1920×1080)IPS、光沢なし、LEDバックライト
◆メモリー 8GB DDR4-3200MHz (オンボード)
◆ストレージ 256GB SSD, M.2 PCIe-NVMe
◆標準保証 1 年間 引き取り修理
◆電源アダプター 65W
◆Office ソフトウエア Microsoft Office Home & Business 2021
◆グラフィックス AMD Radeon グラフィックス
◆バッテリー 3セル リチウムイオンポリマーバッテリー
◆Bluetooth (バージョンは製品出荷時のOSのバージョンに依ります。)
◆内蔵カメラ 720p HDカメラ (プライバシーシャッター付)
◆指紋センサー あり
◆キーボード バックライト付 – 日本語
◆ポインティングデバイス タッチパッド
◆ワイヤレス IEEE 802.11 ac/a/b/g/n ワイヤレスLAN (WiFi準拠)
◆本体(W×D×H)mm 321.6×211.6×17.9mm(最薄部)
◆本体質量 約 1.45kg
◆価格 ¥86,799(消費税込、送料込)

米紙も注目する落語界の期待の新人 桂二葉が「日本の伝統コメディー界」を変える

男性が女性を演じられるなら、女性が男性を演じて観客を笑わせることだってできる──男性優位の落語界に挑む桂二葉に米「ニューヨーク・タイムズ」紙が着目。女がなかなか受け入れてもらえないからといって、観客に媚びたりしない。トレードマークのマッシュルームカットで酔っ払いの中年男性を豪快に演じ、今日も観客に笑いを届ける。

高座の上で、35歳の桂二葉(かつら・によう)は繊細なピンク色の着物をまとっている。その小柄な体格と甲高い声は、日本最古の喜劇の演じ手というよりも、大学生といったほうがしっくりきそうだ。

だが彼女お得意の演目が始まると、観客は大笑いした。酔っ払って呂律の回らない香具師の中年男が、謎めいた油の薬効成分を見せつけようと、自分の腕を刺して失敗する大騒動だ。

酔っ払いや愚か者、それも多くが男性の登場人物を、幅広く演じることができる並外れた演技力のおかげで、二葉は「落語」という日本の古典的話芸の世界で絶賛されてきた。そして2021年11月、彼女は栄誉ある「NHK新人落語大賞」を、50年の歴史のなかで初めて女性として勝ちとった。

トロフィーを手にした二葉はこう叫んだ──「ジジイども、見たか!」

落語は、歌舞伎や能といった日本の舞台芸術の「ドタバタ喜劇版」で、誕生から3世紀近くが経つ。それまでのあいだ、噺家のほとんどは男性で、男女両方の数多くの人物を演じわけてきた。女性がこの職業に進出したのはわずか40年ほど前で、以降も仲間の芸術家、批評家、そして観客からの抵抗に直面している。現在1000人近くいる現役のプロの落語家のうち、女性の割合は16人に一人に過ぎない。

二葉の勝利は、登場人物が全員男性の古典落語を演じたという点においても、画期的な出来事だった。かつての女性噺家のなかには、女性が男性を演じるのを不快に感じる観客の機嫌をとろうと、あえて古典落語の噺の男性主人公を女性に変える人もいたのだ。

だが二葉は、古い噺を最初に考案されたとおりに語ろうと決めていた。

「私は男の人がするのとまったく同じように落語を演じたかったんです」

今回、「NHK」が主催したこのコンテストで、彼女は5人の審査員全員から満点を獲得した。

「歴史が変わったと感じました」と彼女は言う。

落語は伝統的な話芸で、噺は師匠から弟子へと伝えられる(現在噺家のあいだで流布している噺は、そのうち600ほどだ)。その芸術形態には厳密なルールがある。噺家は、大部分がむき出しの舞台の中央で座布団に座ったまま、ごくわずかな小道具、たとえば扇子や木綿の手ぬぐいのみを使用する。

噺の長さは約10~30分で、数十人の人物が登場する。そのすべてが、噺家の顔の表情や声、腰から上の動作の変化で伝えられる。

「彼女が演じたものは、私がこれまでに見たその噺の最高のバージョンでした」

受賞した二葉の演技を観た文化批評家の堀井憲一郎は、そう語った。

「聴衆としては、ただ面白いものが観たいのです。噺家が男性か女性かは、必ずしも気になりません」

大阪育ちの二葉は(本名は「西井史(にしい・ふみ)」)、法的な婚姻関係にない両親のもとで育てられた。日本では珍しいことだ。彼女の家庭では、伝統的な家庭に比べ、性別役割分担に対する考え方がより柔軟だった。

「母はいつも、『男の子なんだから』とか『女の子なんだから』というのは意味が無いと言っていました」と二葉は振り返る。

二葉は京都の大学で仏教美術を学びながら、落語の寄席に通った。お気に入りの登場人物たちは、教師の罰を食らっていたクラスのお調子者たちを連想させた。

「彼らはアホなことを喋り、観客は堂々とこの人たちを笑っている。それにとても惹かれたんです」

女性が高座に上がるのが大変なことは、二葉にもわかった。女性が演じると「お客は笑おうとしないんです」と話す。彼女が読んだある有名な噺家の本には、女性は観客を「不快にさせる」と書かれていた。

卒業後、彼女は入門を引き受けてくれる師匠を捜した。日本の喜劇の中心地である大阪にある、ベテラン落語家、桂米二(かつら・よねじ)の楽屋の扉の外に初めて立ったときは「女性の弟子は一切受け入れる気はない」と告げられた。2度目に頼んだときも、彼はやはり断った。

「こんなけったいな女の子が私に弟子入りしたいだなんて、信じられませんでした」と米二(64)は語る。

「自分が女性の弟子を育てられるという自信がなかったんです」

米二は彼女が定期的に彼の高座に通い、よく最前列に座って聴いているのを思い出した。「あの子に賭けてみよ」と促す天からの声まで聞こえたと言う。3度目に彼女が扉をノックしたとき、米二は、二葉がほかの弟子たちの練習を見学することを認めた。

こうして約半年間、彼女はスーパーマーケットでアルバイトをしながら米二の家を訪ね、稽古を見学した。そして2011年、米二は正式に彼女の3年間の弟子入りを受け入れ、2枚の葉を意味する「二葉」という奇妙な名前を与えた。彼女はまた、彼が師匠から受け継いだ姓も引き受けた。

だが、二葉の才能には気づいたものの、女性が本当に落語界の一員になれるものかどうか、米二には定かでなかった。「落語の基本には、『男性が演じる芸術形態である』ということがあります」と彼は言う。

二葉にとって「男性が女性を演じられるなら、女性が男性を演じることもできるはずだ」という考えは、まさに理に適っていた。ときとともに、彼女はファンが「マッシュルーム」と呼ぶ、特徴ある中性的な丸い髪型をするようになった。しかし男性を演じるために、声を低くするとか、そのほかの見当違いと思われるテクニックに頼ることは決してない。

以下、The New York Times にて……

日立コードレススティッククリーナー PPV-BL2H 購入

◆標準質量(本体質量)1.1kg(0.80kg)
※標準質量は本体・延長パイプ・ヘッド・電池の合計質量。(本体質量)は電池を含みます。
◆連続使用時間〈強〉約8分〈標準〉約30分
◆充電時間 約3.5時間

とにかく、重量1.1kgというのが有り難い。
スイッチを入れると自走式というか、さらにラクラク掃除ができます。
ヘッド部分に白色LEDライトが付いていて、暗いところも掃除がしやすいです。
いやぁ〜、これは買ってよかった!

『ミス・マルクス』 シネ・ヌーヴォX

▶巷の評判はイマイチですが、個人的には結構楽しんだ一本。
▶ロモーラ・ガライってこんなにいい役者やったっけ?
▶最後、エリノアが踊り狂うシーンが好き!しかも後ろでエイブリングは寝てるし!
▶カールがいくら糞野郎でも彼の思想や著作が糞になる訳じゃないから……
▶パンク・ロックとクラシックが同居するサントラ盤も面白い。

で、以下「ELLE誌」より引用。

19世紀末、社会主義運動の女性リーダーが突然亡くなったニュースは世界を震撼させた。あのカール・マルクスがすべてを託したと言っても過言ではないほどの正統なるマルクス主義の後継者であり、労働者、女性、子どもを貧困と階級から解放しようとした、“ミス・マルクス”ことエリノアが、毒父、そして内縁の夫に搾取され、苦悩の中43年の短い人生に自ら幕を下ろすまで 。
   text by keiichi koyama  2021/09/03

◆裕福な社会主義者

カール・マルクスはプロイセン王国トリエル(現在のドイツ・トリーア)で1818年5月5日、ユダヤ系の上告裁判所付き弁護士の父ハインリッヒの一家に生まれた。あのロスチャイルド家にも繋がる家系のかなり裕福なユダヤ人家庭。親戚には銀行家のベンジャミン・フレデリック・フィリップス(エレクトロニクスメーカー、フィリップスの創業者の父)がいた。豊かな子ども時代を、フランス哲学を学び、ラシーヌの作品などから影響を受けながら過ごした。
 
18歳で婚約。妻は姉の親友で幼馴染のイエニー・フォン・ヴェストファーレン。彼女は貴族の出身で、義理の兄は内務大臣を務めた。長男を亡くした一家にとって大切な次男。彼は大切に育てられ、父、母、妻、そして姉の4人に助けられて一生を送った、典型的な“お坊ちゃん”だった。

そのため、基本的に経済的にも精神的にも依存が激しく、“自分の尻を自分で拭えない”人物であったことは否定しようがない。

妻への愛の手紙も多く残されており、彼女の貴族の出自を誇ってもいたが、ひっそり妻の幼い頃からの召使ヘレーネ・デムート(通称レンシェン/レンヘン)に性の相手をさせ、妊娠させ、その子供を親友エンゲルスに預け彼の子どもとして育てさせるなど、行いがすべてを物語る。

他人を頼らなければ十分な暮らしもできない中、イエニーにも妊娠と出産を繰り返させた。1844年に最初の娘小イエニー(ジェニー)を出産。この頃手掛けた雑誌『独仏年誌』は失敗。ベルギーに移住。次いで1846年に次女ラウラ(ローラ)、翌年長男エドガー、ロンドンで1849年次男ハインリッヒも生まれる。しかしマルクスの子どもたちは次々に亡くなっていく。

最初に1950年ハインリッヒが1歳で命を落とす。このときイエニーの母からのわずかな仕送りを頼りに生活し、貧しさの中で治療もできず、葬儀さえ出せなかった。仕方なく棺代を他人から借りざるを得なかったという。そんな中でも1851年に三女フランチェスカが誕生するが、翌年すぐに亡くなる。1853年に長男エドガーが結核にかかりどんどん悪化する中、再び妻を妊娠させ、1855年の1月に四女エリノアが生まれると、エドガーは入れ替わるようにこの世を去った。

哀しみのカールを救ったのはイエニーの朗らかさと財産だった。長男エドガーが亡くなった年、イエニーの伯父ハインリッヒ・ゲオルグ・フォン・ウェストハーレンの遺産が転がり込んできたことで助かったのだった。
 
カールはすべてのエネルギーを『資本論』を書くために使った。経済について熱弁しながらもカール本人には稼ぐ能力がほぼないため、ことあるごとに親友で仕事上のパートナー、フリードリヒ・エンゲルスが資金を援助。その数はマルクスに弱みを握られているのではないかと疑いたくなるほど。さらに言えば、字が下手すぎて鉄道局の書記にすら採用されなかった。そのため原稿は妻イエニーが清書するしかなかったという。

世俗の余計なことを考えなくていいブルジョワ的生活があればこそ、資本主義と労働者の仕組みを冷静に分析できたと言えるかもしれないが、同時に支える側には理不尽なほど負担をかけていた。

◆父が社会主義を託した天才少女

子供好きで有名だったマルクス。遊びはシェイクスピアごっこ、暇つぶしは社会主義論とグリム童話。おかげで娘たちは皆優秀に、とりわけ末娘のエリノアは天才的な頭脳を披歴した。父のプロレタリア主義を理解し、チェスの相手もした。カトリックにあこがれを抱いたときに、父マルクスがなぜ宗教がいけないかを論理的に説明したところ、すべてを理解し納得することすらできたという。このときエリノア、わずか6歳。姉のイエニーとローラももちろん父の政治教育を受けたが容姿も母そっくりで、母の道、つまり妻としての道をたどった。だが、エリノアだけは父の生き写しとなり、政治に強い関心を寄せたのだった。

ハインドマン(英国社会主義者)は「マルクスに匹敵する身体的なエネルギーと決断力をもち、彼女の知性は文学上、政治学上の成功が可能だったはず」で、父親を超えることすらできたはずだと語っている。しかし同時に「父親の才能と比べて自分が劣っていると感じていたのか、マルクスの欠点を見抜くことができなかった」という。父は娘に自己肯定感を教えなかった。もしくはマルクスは娘に自分を超えることを許さなかったのかもしれない。エリノアは自分でも「父親の才能を受け継がなかった」と語っている。

エリノア自身は見逃していたわけだが、彼女は父がまったくもっていなかった資質を携えていた。マルクスの周辺の人物が異口同音に語る「高潔さ」だ。他人に対するシンパシーとそれに伴う献身性。他人をケアするために自分のエネルギーを惜しみなく注ぐ姿勢は真のリーダー力を培った。

◆父親に阻止された恋

父の右腕となって活躍する最中、16歳の天才少女は17歳年上のフランス人ジャーナリストのプロスペール=オリヴィエ・リサガレーと恋に落ちる。ところが年齢の差もあってマルクスは猛反対。婚約者と偉大な父親の板挟みに合い苦しみ、ついに許可が下りた頃には二人の愛情は醒め、破局を迎えてしまった。

『資本論』第一巻が出版された時、カールはすでに49歳。イエニーは53歳。しばらくすると身体は衰え始め、治療に専念するようになった。その後、1881年にイエニーが亡くなるまで、末娘エレノアと隠れた愛人レンシェンが共に介護。マルクスへの介護も、妻を追うように1883年3月14日、彼が亡くなるまで続けられた。

残念ながら労働者の搾取を否定する立場だったマルクスは、あらゆる人のケア(財政的にも精神的にも肉体的にも)を浪費したのだ。

◆終わらないケア労働と破滅の始まり

両親の介護からようやく解放されると、そのあとすぐ今度は甥っ子の世話が待っていた。マルクスより2カ月前、姉ジェニーが産後の肥立ちが悪く(膀胱がんという説もある)亡くなったため引き取ることに。エリノア、このとき28歳。

そこに恋の相手が現れる。社会主義グループの中にいた生物学者で劇作家のエドワード・エイヴリングだ。他人に尽くしたいと思う精神と、他人に依存される生活から解放されたいという欲求と、ふたつに引き裂かれながら、エリノアは恋人と甥っ子とを天秤にかけた。

これまで他人の世話ばかりしてきた。今度は私が幸せになる番……。

甥っ子を父親に送り返し、エイヴリングのもとに奔る。

しかしこの選択は、新たな依存関係を生み出しただけだった。

このエイヴリングが彼女の高潔な博愛主義を、自分のエゴイズムのために搾取したことを忘れてはいけない。エリノアの友人オリヴ・シュライナーが「近づくと虫唾が走る」と表現したほど、エイヴリングは他人の愛情を利用することに恥じらいがなかった。
 
搾取構造だけを見れば、父マルクスとエイヴリングはそっくりだ。なぜそんな相手を選んだのか。「マルクスとエイヴリングはある意味正反対だと言えます。マルクスの性格は非常に“ドイツ的”であり、遊びがありませんでした。逆にエイヴリングは自由人でまさにアーティスト。そこに惹かれたのでしょう」と語るのは、エリノアの人生を映画化した映画監督『ミス・マルクス』のスザンナ・ニキャレッリだ。

エイヴリングが社会主義に傾倒していたのは、放蕩生活を送っても余裕のある暮らし、つまりはブルジョワ的生活を送りたいと考える自分の都合の良さを、資本主義を叩くことによって正当化できると考えていたからにすぎない。エリノアが社会主義をアメリカに広めるツアーに参加したときは、予算も考えず浪費。帰国後党にたしなめられている。そのうえアヘン中毒になり、借金も返済しきれなくなっていった。当然、友人たちは別れるべきだと進言。

◆捨てられないダメ男の赦せない裏切り

それでもエリノアはエイヴリングと別れなかった。

なぜ彼女ほどの人物がエイヴリングのような人間に堪えられたのか不思議に思える。だが父による搾取に慣れていたエリノアにとっては、甘受しやすい存在だったと捉えれば納得できる。生活費も渡したし、アヘン癖にまで付き合った。父の革命論を信じ続けてきたように、一旦愛したエイヴリングという一種の「主義」を否定することができなかった。鎖を切って飛び立つことに恐怖していたのかもしれない。こうして彼に献身力をイデオロギーを媒介に搾取され、エリノアは愛情の喜びと依存の苦しみの狭間でがんじがらめになり、ますます苦悩していく。

そしてついに彼女の耐性が限界に達する事件が起こる。
 
女性労働者や児童労働からの解放運動もリードし、ますます彼女の能力は社会に必要とされていった最中に、自分との結婚の可能性を否定してきたエイヴリングが、よりにもよって20以上も年下の女優とこっそり結婚していたことが判明したのだ。

貧しく利己的なエイヴリングにとって、稼ぐエリノアは食い扶持だったと言える。社会主義のリーダーとして、優れた言語能力をもち、優秀な翻訳者として経済力を携えていたエリノアを、「恋愛」という美しいレースで本音を上手に隠し搾取していただけ。多くの女性と浮名を流した彼にとって「恋愛」は食べていく手段だった。

15年もの内縁関係を否定する大きな裏切り。「彼女は父という男性に才能を育まれ、その分男性に大きく失望したのです」。膨大な資料をリサーチしたニキャレッリ監督が解説する。「しかし、彼女が亡くなったのは決して恋愛に絶望したからではありません。女性が本当の意味で自由になるためには、闘い抜かなければいけない。その最後の闘いを見せたのだと私は思っています」。
 
1898年3月、エリノアは青酸カリを飲んで自ら命を絶った。

この“事件”の捜査で、エイヴリングはエリノアが妻であることを否定した。法廷で自殺を仄めかされたことが以前にもあるか問われたとき、「はい、何度も。でも冗談だと聞き流していました」と他人事のように答えたという。
 
この悲劇は残念ながらエリノアの死で収まらなかった。彼女が所有していた偉大な父マルクスの遺稿の権利を巡って、マルクス主義の使徒たちが争いを巻き起こし、騒動に巻き込まれた唯一の生き残りである姉ローラは夫とともに自殺した。不思議なことにエリノアは彼女が持っていたマルクス関連の著作権をエイヴリングに相続していた。彼女が一生かけて搾取され続けたマルクスとマルクス主義への最後の復讐だったのかもしれない。

エリノアを失ったエイヴリングは間もなく小さな部屋の隅でひっそり死んだ。

「娘を持つ父、そしてすべての男性に彼女の物語を知ってほしいのです。父が自分のように育てた娘に、そして女性にどんな世界が待っているのか」。前述のニキャレッリ監督も訴える。父が娘にリーダーシップを、独立心を伝えることで多くの偉大な女性たちが世界に現れてきた。しかし残念ながら彼女の死から100年以上を経て、父親たちの多くは女性の前に立ちはだかる理不尽な壁を知らない。今もなお。

【参考文献】
『Eleanor Marx: A Life』by Rachel Holmes, Bloomsbury 2016
『Tussy is Me』by Michael Hestings
『エリノア・マルクス 1855-1898 ある社会主義者の悲劇』2010 みすず書房 オンデマンド版
『宮本百合子選集 第10巻』 1969

謹賀新年 壬寅元旦

2021年も引き続きコロナの影響でなんとも昏い一年でした。不要不急の外出云々というのも少々飽きが来たというか何というか……そういう意味では、読書の時間はコンスタントにとれたかなぁ……
◆2016年に逝去されたウィリアム・トレヴァー。冒頭の一編を読んだだけで、もう〈トレヴァー・ワールド〉全開。今後もう新しい作品にお目にかかれないのは、残念、無念。ウィリアム・トレヴァー『ラスト・ストーリーズ』 ◆短篇作家としての〈芸の力〉を再認識。ローレンス・ブロック『石を放つとき』 ◆今回、著者とは切っても切り離せない〈お酒〉が出てこないのが個人的には少々残念。ボリューム的には中篇ですが、中味は十分詰まっています。クォン・ヨソン『レモン』 ◆韓国人について、韓国系アメリカ移民について、健常者について、障碍者について、病気のこどもたちの親について、自閉スペクトラム症について、代替医療について、陪審制について、そしてなによりも家族について考えさせられた一冊。アンジー・キム『ミラクル・クリーク』 ◆個人的には最も出版を待ち望んでいた一冊であり、まさに期待通りの一冊。今回も粒選りの13作品が連作の形で並んでいますが、この続篇では特に〈老い〉について語られており、そこがなんとも印象的。いやぁ〜、考えさせられること多し……作者、訳者、読者、みんな齢を取りました。エリザベス・ストラウト『オリーブ・キタリッジ、ふたたび』 ◆日本の怪しいオッサンが主人公なら、完全にストーカー扱いされるに違いないストーリー展開ながら、そこはやはり〈おフランス〉、どこまで行っても洒落ています。アントワーヌ・ローラン『赤いモレスキンの女』 ◆プロローグからしてなんとも大時代の風があって非常によろしい。タイトル通りホテルが主人公のお話。荘厳で重たい雰囲気かと思いきや、語り手が章ごとに変わるため、軽妙なタッチの語りもあり、なかなか自由自在。謎解きが苦手な当方でも最後まで面白く頁をめくることが出来ました。アダム・オファロン・プライス『ホテル・ネヴァーシンク』 ◆2021年度フィクション海外短篇部門ベスト上位決定! ローレン・グロフ『丸い地球のどこかの曲がり角で』 ◆個人的には2021年度フィクション海外長篇部門新人賞決定! リン・マー『断絶』 ◆今〈大阪〉で、いや〈日本〉で一体何が起きているのかよくわかる一冊。岸政彦・柴崎友香『大阪』 ◆チェスのことは勿論、将棋や囲碁の嗜みもない者が読んでも、どんどん惹き込まれてゆく面白さ! そして、なんという〈美しい〉小説! ウォルター・テヴィス『クイーンズ・ギャンビット』 ◆新聞等でよく目にする〈入国管理局〉って一体どんなとこ?という疑問にフィクションの形を借りて答えてくれる一冊。中島京子『やさしい猫』 ◆いやぁ〜、あっという間の読了! 嫌な主人公たちが多い昨今、感情移入のできる魅力的な主人公たちの登場! これは続篇が楽しみ。マイケル・ロボサム『天使と嘘』 ◆〈マンチェスター市警 エイダン・ウェイツ〉シリーズ、回を重ねていくごとに確実に面白くなっているのに、三部作としてはこれでおしまいというのは甚だ残念!ジョセフ・ノックス『スリープウォーカー』
以上、なんだか全体的にエンタメ系が主流になってしまった一年でした。これもコロナの影響? 今年こそ平常に戻りますように……